ダメージの修理でも、また旧車のレストアにおいても、共通して必要となるのが分解作業だ。
パーツを交換するとき、修理して再利用するとき、また、他のパーツにアクセスするために一時的に取り外すだけであっても、分解作業は正しい手順で行なう必要がある。
場合によっては、シートメタルに付いた元の塗装を剥がし、新しいパテと塗装を再度施すべきときもある。塗装や錆を取り除くには、サンドブラストや薬品、サンダーやグラインダーを活用する。
分解
各パーツがどのような方法で固定されているか確認せず、ただ漠然とボルトを取り外してしまうと、組み立ての時に必ず不具合が発生する。
分解作業はじっくりと、手順を確認しながら行なうこと。車体の構造や仕組みについて少し学ぶことで、組み立て作業をスムーズに行なうことができ、手違いでパーツを傷付けたり、追加の修理が必要になるということも少なくなる。
その結果、作業自体を楽しむ余裕さえ出てくるはずだ。
ボルトやネジ、その他の留め具
OEM製品を一般的な車両へ固定するためのボルトやネジには、標準(インチ)規格、メートル規格、特殊規格が採用されている。
どのタイプが優れているというわけではないが、効率的に取り付けるためには、それぞれに適正なツールを使用する必要がある。
古いアメリカ製の車両(1970年以前には、ほぼインチ規格が採用されている。それより新しい車両には3つの規格が混在し、アメリカ製以外の車両はイ
ンチ規格を採用していない。もちろん、前のオーナーや技師によってパーツが取り替えられている場合は、ボルトのストックがないという事態も起こり得る。
自動車の分解においては、3/8インチドライブ(ハンドルへの差し込み口が38インチサイズ)のソケットレンチとコンビネーションレンチをインチ規格で各サイズ、さらに必要に応じてメートル規格のレンチを幾つか用意すれば、ほとんどの作業を行なうことができるはずだ。
一部は1.4インチドライブのソケットレンチセットで対応することもできるがこちらは狭い場所での作業に活用すると良いだろう。
また、様々な長さのエクステンション(ソケットの延長具)を揃えておけば便利だ。
1インチドライブのような大型のソケットレンチは、いかついトラックの整備や、ガチガチに錆び付いた古いバンパーのボルトを取り外すようなことがなければ、まず必要はないはずだ。
ボルトが大きくなるほど、錆などの腐食や衝撃によるダメージの影響を受けやすくなり、取り外しが困難になる。
また、時にはブレーカーバーやインパ外レンチを使用して、非常に強い力をかけないと取り外せないボルトもある。
ボルトが外れないときの最終的な手段は、チゼル(圧縮空気式やハンマーで叩くタイプがある)でボルトを叩く方法だ。
しかしこの方法を使う時は、ボルトが破損することを覚悟しなければならない。その代わり、一度エアチゼルを使い始めれば、作業が驚くべき早さで進むはずだ。
もちろん、壊したボルトについては新品を用意する必要が出てくる。
圧縮空気式のラチェットハンドルを使えば腕をあまり動かさないで済むため、何本ものボルトを取り外す際にも疲労が少ない。強い力が必要でない作業なら、分解でも組み立てでも非常に役に立つだろう。
ネジの頭部分の形状はマイナスやプラスの他にも、トルクスや六角穴付き、または手で回すタイプなど、様々な種類が存在する。
緩める際は、それぞれの形状に合ったツールを使用する必要がある。
トルクスネジや手回し式のネジは、プラスやマイナスと比べると非常に特殊な形状をしている。
六角穴付きネジは、文字通り頭に六角形の穴が開いている。このネジの脱着には、適正なサイズの六角レンチを使用する必要がある。
その他にも、特殊なプライヤーを滑らせて取り外す、プラスチック製の留め具なども存在する。これは下部を両側から挟み、ほじるようにして取り外す。
このような留め具はヘッド部分が大きく、最近のモデルの自動車で多く採用され、フロント周りの柔軟性を持ったパーツやイ
ンナーフェンダーのパネルなどを傷つけずに固定するのに役立っている。
こういった部分は、通常のボルトで締め付けることで、ひび割れなどの損傷を与えてしまうことがあるのだ。
出典:自動車板金修理