剥離作業には、問答無用で業者に依頼した方が良いパターンが度々あるのだ。あなたがトラブルに巻き込まれる前に、私のモデルAチューダーと古いシェビーのトラックから塗装と錆を取り除いたときの話をしよう。
剥離は車両のレストア作業において重要な作業だが、事故によるダメージの修理についても同じく重要だ。
昔は、錆に深く裂け目を入れて剥がすという手段が普通だった。
修理の工程において剥離が行なわれるのは、交換用パーツの色が車体の色と異なる、またはパーツ自体に錆があるという場合で、剥離することで、分からなかった金属地を確認することもできる。
上から塗装して下手な修理を隠したり、コーティングのムラを増やしたり定着を妨げてしまうシリコンなどの厄介な薬品で汚してトラブルを招くことがないよう、しっかりと金属地まで剥離を施しておくこと。
ラッカー塗装のひとつの利点は、何度も塗り重ねることができるため、ピカピカの塗装に必要となる厚めの塗りを施すことができることだ。
この方法はサーキットの車両展示ではいかにもきれいに見える。
しかし、このような何層にも重なったラッカー塗装が、長い間風雨に晒されれば、その表面は日焼けしたワニのように醜くなってしまう。
このような状況の車に再塗装を施すときは、完全に塗装を剥がしきって金属地をむき出しにする必要がある。
現在、ラッカー塗装はほとんど行なわれていない。しかし、ラッカー塗装を施されたレストア作業を必要とする車両が、様々な家庭の納屋やガレージには無数に存在していることだろう。
改造やレストアの計画の中で、錆が表面上だけのものか、中まで入り込んでしまっているのかを見分けるのは非常に難しい。
その善し悪しを判断するたったひとつの具体的な方法は、塗装を剥がしてしまうことである。
一部をパッチパネルで修復したり、パネルごと交換することがあれば、それを見ることができる。
もちろん、錆がどれだけはっきりと見えているかということや、費用を節約するためにどの程度の新しいパッチパネルを買うことができるかにもよるが、クルマの塗装や錆を剥がす基本的な方法には、サンドブラストによるもの、剥離剤によるもの、サンダーやグラインダーによるものの3つがある。
全て一長一短があるが、それぞれの費用を比べながら、ぞっとするストーリーを紹介しよう。
メディアブラスト(サンドブラスト)
メディアブラストには長い間、川で採れる粗い砂が使用されてきたため、サンドブラストという呼ばれ方もあった。
ブラストという呼び名が一般的。砂は現在でも、鉄製の橋やレンガの建造物の落書きを消す際など、様々な作業に使用することができる。
しかし、シートメタルに砂を使用すると、引っ掻き傷が非常に付きやすく、高熱が生じるため歪みの原因となってしまう。
ケイ土は川の砂よりも目が細かいが、やはり欠点はある。砂を使ったブラストは非常に細かい粉末が生じるため、人間が長い間吸い込み続けることでシリコシス(珪肺症)や潜在的な肺の炎症に罹ってしまう危険性があるのだ。
この喜ばしくない副作用は、砂の代替品を使用することで避けることができる。
塗装の剥離にはクローム合金を使用したブラスト、また錆にはサンドブラストが最適だ。ただし、ブラストは初心者がそう簡単に始められるものではない。
安全を確保するためには、専用の衣服、さらに防護マスクを用意する必要がある。サンドブラストを使用する際の、重要な3つの注意事項を紹介しよう。ブラストを施さない部分には必ずマスキングをする。必ず適正なメディアを使用する。作業が終わったらメディアを完全に除去する。
マスキング
どんな種類のメディアを使っても、必ず少しはザラザラした感触が残る。
そのため、加工されたり、既に塗装が剥がされている表面や溝のある部分など、ブラストが悪影響を与えそうな部分にはマスキングを施さなければならないトリムパーツが収まる外装の溝は、適当な長さにカットしたゴムホースやチューブで覆うことで簡単にマスキングを施すことができる。
その他の場所は厚めのボール紙とマスキングテープで覆い、尚かつブラストの圧力は低めに、狙いをしっかりと定めて行なうこと。
メディアの選択
ブラストに使用するメディアは、ブラストを施す表面の素材に見合ったものを選ぶ必要がある。表面の素材よりも硬度の高いメディアを吹き付けてしまうと、むしろ傷を付けてしまうことになる。
錆などの不要な素材だけを剥離させるには、硬度の低いメディアをたくさん吹き付けるのが最も望ましい方法だ。
硬度の低いメディアは、ケイ土やアルミニウム酸化物、またはプラスチックメディアやクルミの殻を使った物などがある。鉄や川の砂を使ったメディアは避けること。
サンドブラストに使用される素材は、砂以外にも様々な物があるが、ひとつを用意すればどんな表面にでも使用できるというわけではない。
従って、使用するメディアがその作業に適しているかということを、常に確認する必要がある。鉄の表面から塗装や錆を取り除くには、アルミニウム酸化物のメディアが最適だ。金属の表面に使用する。
場合、少し高価だがプラスチック製のメディアがベストだ。
プラスチック製メディアは熱を持たないため、歪みの原因になることがない。
ガラスのメディアは、全てというわけではないが様々な場面で良い働きを見せる。また、アルミニウム、ダイキャスト、真鍮などの柔らかい金属には、さらに高価になるが、アルミニウムのメディアが最適である。
メディアを選ぶ際には、ブラストによって金属に傷がつく可能性があることを考慮しなければならない。
効果が強く出るメディアを使うほど、塗装などのコーティングを早く取り除くことができるが、メディアの硬度が高すぎれば、作業は逆効果になってしまう。
出典:自動車板金修理