シートメタルのヘコミや歪みを修理する作業は、シンプルな5つのステップに分けることができる。
始めは修理する部分の塗装剥離、そして可能な限り板金で金属の形を元通りにし、パテによるスキンコートを施して輪郭を完全に整形、その後下塗り、塗装というステップだ。
パネルの修理
板金修理の理屈は非常に簡単だ。しかし、経験の少ない者が板金を行なうと、簡単なはずの作業をわざわざ困難なものにしてしまう。
そこには、次のような間違えた認識があるのだ。「大きく、深いヘコミを直すには大きな衝撃が必要となるため、大きなハンマーを使って大きく打ち下ろさなければならない」。
このような考えを持った者は、最も重く大きいハンマーを工具箱の中から選び出し、シートメタルのへこんだ部分を裏側からガンガン叩くだろう。
確かに、大きなヘコミは大きなハンマーを大きく振りかぶって修理する必要があるが、技術も持たないままに作業を行なってしまえば、さらにダメージを悪化させる可能性もある。
確実にダメージを取り除くためには、ヘコミができたときの衝撃と全く反対の力を正確にかけてやらなければならない。
単純なヘコミであれば、これを直す叩き方もまた単純になるかもしれないが、例えば2、3台のクルマがぶつかったときや、飛び出した電柱に車体がめり込んでしまったときなどは、ヘコミの形状も複雑になってくる。
始めのヘコミが別の衝撃でさらに押し込まれるような形になるのだ。
また、フェンダーなどの形状は、プレスによって整形されているため、すでに力が加えられているような状況である。
そのようなパーツにさらに衝突の力が加わることで、始めの接触点の周りには外側へと盛り上がる方向への力が働いたりする。
シートメタルを叩いて元の形に戻すのだが、内側から叩き出す場合や、外側から引き出す場合がある。
実際に起こる事故を考えると、接触が一点のみの単純なヘコミなどめったにない。
バンパーが相手車両のフェンダーに当り、さらに相手のフェンダーがこちらのドアにぶつかった、などといった状況が一般的だろう。
複合的なヘコミを修理するときのポイントは、衝撃を受けた順番をさかのぼるようにヘコミを処理していくことだ。
離れた箇所がぶつかった順番を考える必要はないが、ひとつひとつのダメージに関して言えば、生じたヘコミを最後から順に辿りながら修理をする必要があるということだ。
この順番を守らなければ、実際には金属を伸ばす方向に力が加わってしまい、さらにダメージが増えるため、結果として余計な作業が増えてしまうことになる。
出典:自動車板金修理